自分の持ち味とは

ドレスは店のもの、名刺も作らない、ドリンクは頼まない、やる気のないキャバ嬢だった私でも、お客さんとの席でやる気の無さは見せませんでした

お客さんの隣りに座ると笑顔で対応し、会話がなくならないように、お客さんが楽しんで帰ってもらえるように考えていました。

私は基本的に八方美人なので、人に嫌われたくない、嫌いな人にも好かれたいという感情があります。外面が良いタイプなので、お客さんにも良い顔をしてしまうのです。

それに加えて、人と話すのが好きなほうで、友達にも「あんたは二人きりで遊べる友達が異常に多いよね!」と褒められるほどでした。

キャバクラは話す相手が男性なだけで、色んなタイプの友人とでもマンツーマンで遊べる私には、どんなお客さんでも対応に困る事はありませんでした。

営業メールも電話もしない、お客さんにドリンクをねだったりしない、この私のやる気の無さが、何故かプラスに働く事になったのです

働き始めて1ヶ月で、私は次々指名を取るようになりました。一度、席を立ったテーブルに場内指名で戻る事も増え、フリーのお客さんで名刺を渡した人はまた数日後、私を指名で来てくれるようになりました。

お客さんが口にするのは、私の気取っていない素朴なところが好き、キャバ嬢っぽくないのが良い、話しやすい、と言ってくれました。普通の女の子と話している感覚らしいのです。

今でいうAKBのコンセプトである、クラスにいそうな普通の女の子、そんな手の届きそうな存在だったのでしょう。

田舎から出てきた10代の大学生で、キャバクラで働き始めたばかりというのが、私の持ち味になっていたのです。

女性の誇り・女性のプライド

キャバクラは自分の誕生日が稼ぎ時。指名のお客さんはもちろん来てくれるし、フリーのお客さんは場内指名をしてくれる確率が上がります。

誕生日というだけで、お祝いに乾杯しようと、どこの席に着いてもドリンクを出してもらえ、指名の席では高級シャンパンを開けてもらえる事も期待出来ます。もちろんプレゼントをくれるお客さんもいるでしょう。

でも私は、ここで365日の中で自分の一番大切な時間を過ごすのは絶対に嫌だと思いました。だから、ちょうど自分が働き出してから3ヶ月後の自分の誕生日の前日に仕事を辞める事をマネージャーに伝えました

キャバクラで働き2ヶ月うを過ぎたあたりから、私はやる気のないキャバ嬢を貫き通しながらも、営業メールをしないところやドリンクをねだらないところなど、お客さんにしてみれば、不慣れな純朴さが魅力のキャバ嬢として、店のナンバーの洗練された人達とは違うところに惹かれたという指名客のテーブルを回るようになりました。

ラストに4組のお客さんが全て私のお客さんで、私が手の届かないと思っていたナンバーが、私のお客さんのヘルプに付くような光景を目の当たりにしました

マネージャーに呼び出され「ここだけの話、今ナンバー2だよ」と言われた時、キャバクラで働いて、どんな大金を貰っても嬉しいと思わなかった私が、心から嬉しい!と思った瞬間でした。

たくさんのお客さんが私を認めてくれた、たくさんの男性が選りすぐりの女性の中から私を選んでくれた、女性としての誇りとプライドを得る事が出来ました

19歳になる前日、私は無事3ヶ月間のキャバクラデビューに幕を閉じました。それから、有名キャバクラや高級クラブで働きましたが、この18歳で体験した3ヶ月間が一番濃いキャバクラ生活でした。

 

 

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